大判例

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東京地方裁判所 昭和37年(レ)155号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕本件土地はもと石黒松吉の所有であつたが、昭和三〇年四月一四日控訴人が買い受けて所有権を取得した。本件土地上には二階建の本件建物があつたが、財産税の物納として国の所有であつたところ、昭和二四年六月二〇日控訴人、竹島栄寿、石塚俊明の三名が共同で国から払下を受け、その敷地たる本件土地を当時の所有者石黒から賃借するとともに、その一階を竹島の所有、二階を控訴人および石塚の共有と定め、昭和三一年一一月一日その旨の分割登記を経た。被控訴人は昭和二九年末頃竹島から本件一階建物を譲り受けて、昭和三一年二月一日付売買による所有権取得登記を経た。また、本件二階建物は、その後持分の譲渡を経て控訴人の単独所有となつた。控訴人は、被控訴人が本件土地上に本件一階建物を所有して本件土地を不法に占有しているとして、所有権に基いて本件一階建物を収去して本件土地を明渡すことを求めた。被控訴人は、(イ)本件一階建物を竹島から譲渡を受けた際、土地賃貸人たる石黒の承諾をえて本件土地賃借権も譲り受け、かつ控訴人が石黒から本件土地所有権を取得する際に、被控訴人に対する土地賃貸人としての権利義務を承継することを承諾している。(ロ)控訴人は本件土地について妥当な賃料を収得すればよいのに、単に感情的に被控訴人に損害を与える目的で本件土地の明渡を求めるにすぎないから、権利の濫用に当る、と抗争した。

判決は、右(イ)の抗弁を排斥したが、(ロ)の抗弁を容れた。その説くところは次のとおり。

「そこで次に被控訴人の(ロ)の抗弁についてしらべてみると、控訴人が本件一階建物の屋上に本件二階建物を所有してこれに居住し、右一階建物の入口、炊事場、手洗所、洗濯場、廊下等を使用していることは、控訴人の認めるところであり、右事実と……を綜合すれば、被控訴人所有の本件一階建物の屋上に控訴人所有の本件二階建物が存在し、控訴人は、昭和二四年六月二〇日以前から本件二階建物に居住し、当初から本件一階建物の入口、炊事場、手洗所、洗濯場、廊下等をその居住者と共同して無償で使用して来たのであり、被控訴人は昭和二九年頃から右一階建物に居住し、それぞれ隣同志であること、控訴人は本件土地取得当時、被控訴人が右土地について借地権を有する事実を知つていたこと、昭和三〇年三月頃、本件土地の当時の所有者石黒が右土地を他に売却することになつたので、右土地を敷地として建物を所有する控訴人及び被控訴人間において、控訴人及び被控訴人が共同して右土地を買受ける旨を合意したこと、しかるに控訴人は、その後被控訴人に対し、何等の交渉もせず、その諒解を求めないで、右土地を買受けたこと、このため控訴人と被控訴人との仲が不和となり、控訴人は本件土地について被控訴人の借地権を否認するに至つたことが認められ、……以上認定の事実によれば、被控訴人が本件土地の借地権をその新所有者控訴人に対抗し得ないものであるからといつて、控訴人において、右借地権を否認することは、被控訴人を出抜き、その虚に乗じて、その権利を否認し去るものというべきであり、甚だしく信義に反するものといわざるを得ない。又控訴人としては、本件土地上に本件一階建物を存置させ、右土地を相当の賃料を徴して賃貸しておいても、財産上格別の支障もないのに反し、被控訴人が本件二階建物から右一階建物を分離収去することにより、右各建物の経済的価値は著しく減少し、その結果、被控訴人が重大な損害を受けるばかりでなく、控訴人自身も相当の損害を受けることになるので、かかる場合には、被控訴人の右借地権が控訴人に対抗し得ないというだけのことで強いて右土地の明渡を求めることは、所有権の行使としてその正当な範囲を逸脱し、権利の濫用として、法律の保護に値しないものといわざるを得ない。」

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